個人事業主が支払う税金とは?節税対策などもあわせてご紹介!
個人事業主が支払うべき税金を把握し、適切に対応しよう
個人事業主となり、ある程度の所得が得られれば納税する必要があります。しかし、いくらになるのか、税金の種類はどういったものがあるのかと不安になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そういった不安を払拭できるよう、個人事業主が支払うべき税金について解説します。
また、節税対策もご紹介するので、個人事業主として税金を正しく理解したい方は参考にしてください。
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この記事の目次
個人事業主が支払うべき税金4種類
個人事業主が支払う税金の種類は主に4つです。税金の種類によっては、条件が当てはまる個人事業主のみ納付すればよい場合もあります。
それぞれの概要を解説していきます。
所得税・復興特別所得税
収入から経費を引いた所得に対して課せられる税金が所得税です。毎年1月1日から12月31日までの1年間に発生した所得が対象となります。
所得額が多ければ多いほど税率がアップする仕組みで、個人事業主が納税する税金の中でも大きな金額となります。国税なので納付先は国です。前年1年分の所得を翌年の2月16日から3月15日までに確定申告し、納付します。
復興特別所得税は、源泉所得税を徴収する際にあわせて徴収される税金です。東日本大震災からの復興に必要な財源確保を目的に創設されました。
復興特別所得税は、2013年1月1日から2037年12月31日までの所得税にプラスして納付することが義務付けられています。
所得税・復興特別所得税の計算方法について
先に所得税を計算し、その後に復興特別所得税を出しましょう。それぞれの計算方法を解説します。
課税所得(収入-経費-所得控除)×所得税率-控除額
基準所得税額×2.1%
課税所得額ごとの税率と控除額は、以下のとおりです。
課税所得額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円~694万9,000円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
所得控除額について
所得税額を算出する際に差し引けるさまざまな金額を所得控除といいます。
所得控除は、所得税額から差し引くのではなく、収入から必要経費を引いた所得金額から差し引きます。
減額される金額は以下の式で出すことが可能です。
所得控除額が100万円で所得税率が10%であれば、10万円の減額となります。
所得控除の種類は以下のとおりです。
所得控除 | 概要 |
---|---|
社会保険料控除 | 健康保険料・国民健康保険料などの社会保険料を支払った場合に受けられる |
医療費控除 | 年間10万円超の医療費を支払った場合に受けられる |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模共済の掛け金を支払った場合に受けられる |
生命保険料控除 | 生命保険料・介護保険料などの生命保険料を支払った場合に受けられる |
地震保険料控除 | 地震保険料を支払った場合に受けられる |
配偶者控除または配偶者特別控除 | 配偶者の合計所得額に応じて受けられる |
扶養控除 | 16歳以上の扶養親族がいる場合に受けられる |
ひとり親控除 | ひとり親である場合に受けられる |
勤労学生控除 | 学校に行きながら働いており、一定所得以下の場合に受けられる |
障害者控除 | 本人・控除対象配偶者・扶養親族が障害者である場合に受けられる |
寄附金控除 | 寄附した金額に応じて受けられる |
基礎控除 | すべての人が受けられる |
基礎控除に関しては、2020年度から控除額が引き上げられ48万円になりました。
所得が2,400万円を超える場合には額に応じて控除額に違いがあり、2,500万円以上となれば基礎控除は適用外です。
消費税
商品やサービスの提供に対して公平に課される税金が消費税です。個人事業主の場合、提供物の代金に含まれる消費税を納める必要があります。
消費者から預かった消費税額から、仕入れや経費で支払った消費税額を差し引いた分を申告・納税する仕組みです。
ただし、介護保険サービスやお産費用、埋葬料や火葬料、保険料や行政手数料は非課税です。
消費税の計算方法について
消費税は以下の式で計算できます。税率は表中の2種類です。
種類:税率 | 内訳 | |
---|---|---|
国税 | 地方税 | |
標準税率:10% | 7.8% | 2.2% |
軽減税率:8% | 6.24% | 1.76% |
消費税の免税について
個人事業主には、消費税における事業者免税制度が設けられています。
その年に消費税の納税が必要かは、前々年にあたる「基準期間」の課税売上高で決まります。基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、当年は免税事業者となるのです。消費税は免税になり、免税事業者でいる限りは消費税の納税義務がありません。
開業時は基準期間にあたる期間がないため、開業後2年間は原則的に消費税の納税も免除されます。ただし基準期間中や、前年1月1日〜6月30日までにあたる「特定期間」に課税売上高が1,000万円を超えれば、課税事業者となるので注意しましょう。
免税事業者:「前々年」および「前年の1月1日~6月30日まで」の課税売上高が1,000万円以下
課税事業者:「前々年」または「前年の1月1日~6月30日まで」の課税売上高が1,000万円超
例えば、2021年の課税売上が900万円だった場合、翌年の特定期間にも課税売上が1,000万円以下であれば、2023年の消費税は免除されます。
しかし、特定期間の課税売上が1,000万円以上であれば、2023年から課税事業者です。
消費税とインボイス制度について
2023年10月1日から適格請求書等保存方式であるインボイス制度がスタートしました。インボイスを用いて仕入税額控除を受けるための制度です。
インボイス登録を行うと、課税売上高に関係なく課税事業者となります。開業後2年が過ぎれば、1,000万円以下の課税売上でも消費税の支払義務が生じるので、正しく納めなくてはなりません。
インボイス登録を行えば適格請求書を発行でき、受け取った側は消費税の仕入控除が適用できます。登録しておくことで「仕入控除が適用できないから取引を断られる」といったリスクを回避できるでしょう。
免税事業者のままで消費税の免税措置を受けるか、課税事業者となり取引上のリスクを避けるか、個人事業主として恩恵の大きい方を選択してください。
住民税
個人事業主が支払う税金の中には、住民税もあります。都道府県や市町村が実施する行政サービスの維持のために、地域住民が分担して支払う税金です。
住民税は、道府県税と市町村民税を合わせたもので、毎年1月1日時点で住所や事業所を置いている道府県および市町村に納めます。都民であれば都民税・特別区民税という呼び名ですが、性質は同じです。
納税する額は、確定申告で提出されたデータを基にして算出され、市町村から届く納付書に従って支払います。一括または年4払いも選択できます。
個人事業主が納める住民税は一般のサラリーマンとは異なり、均等割と所得税によって税額が算出される仕組みです。
均等割について
均等割は、住民税を支払うすべての人々に平等に課税される仕組みです。基本的には、市町村民税3,000円+道府県民税1,000円の合計4,000円です。都民の税額も同様となります。
また2024年度からは森林環境税の徴収が始まります。これまで復興特別税として臨時的に上乗せされていた年1,000円が、そのまま森林環境税として導入される形です。
ただし、住んでいる自治体によって金額に違いもあるので、あらかじめ確認してみてください。
所得割について
所得割は、所得の割合に応じて課税される仕組みで、前年の所得金額によって納付する金額が異なります。計算式は下記です。
税率は道府県民税(都民税)4%、市町村民税(特別区民税)6%の、合計10%です。
均等割と同様に、住んでいる自治体によって割合が異なるケースもあるので、詳しく知りたい場合には問い合わせてみることをおすすめします。
個人事業税
地方税のひとつであり、都道府県に対して納付する税金です。事業内容に応じて課税されるため、業種に当てはまらなければ納付する必要はありません。
また、事業主控除もあるので、事業所得が290万円以下の場合も納付は不要です。
地域によって税率が異なる場合もあるので、自治体のホームページを確認するか、担当者に直接問い合わせてみてください。納付は税務署から送られてくる納付書に従って行います。
課税対象となる業種は、法律で定められた70の業種です。第一種事業・第二種事業・第三種事業に分けられ、それぞれ税率も異なります。
それぞれの詳しい業種をご紹介します。
業種区分:税率 | 業種 |
---|---|
第一種事業:5% | 物品販売業、運送取扱業、料理店業、遊覧所業、商品取引業、飲食店業、船舶定係場業、保険業、金銭貸付業、倉庫業、周旋業、不動産売買業、広告業、代理業、駐車場業、物品貸付業、不動産貸付業、興信所業、仲立業、請負業、製造業、印刷業、問屋業、案内業、冠婚葬祭業、両替業、出版業、電気供給業、電気通信事業、席貸業、演劇興行業、運送業、旅館業、遊技場業、公衆浴場業、写真業、土石採取業 |
第二種事業:4% | 畜産業、水産業、薪炭製造業 |
第三種事業:5% | 医業、公証人業、設計監督者業、公衆浴場業、歯科医業、弁護士業、不動産鑑定業、歯科衛生士業、歯科技工士業、デザイン業、税理士業、薬剤師業、獣医師業、弁理士業、公認会計士業、諸芸師匠業、測量士業、土地家屋調査士業、理容業、計理士業、司法書士業、社会保険労務士業、美容業、海事代理士業、印刷製版業、クリーニング業、コンサルタント業、行政書士業 |
第三種事業:3% | 装蹄師業、あんま・マッサージまたは指圧・はり・きゅう・柔道整復・その他の医業に類する事業 |
必要に応じて個人事業主が支払う税金
事業形態によっては、4種類以外にも納めなくてはならない税金があります。主な種類を知っておきましょう。
種類 | 概要 |
---|---|
自動車税 | 事業用の車両など、車やバイクを所有している場合に発生する |
固定資産税 | 事務所や店舗を所有している場合に発生する |
不動産取得税 | 事務所や店舗、事業で扱う不動産を取得した場合に発生する |
登録免許税 | 事務所や店舗、事業で扱う不動産を取得した場合に発生する |
印紙税 | 不動産売買契約書など、課税文書を扱う場合に発生する |
自動車税や固定資産税など定期的に支払う税金もあれば、印紙税などのように都度支払いが生じる税金もあります。
特定のビジネスにおいては、税金の支払いが多くなることも少なくありません。経費に計上できるものを正しく把握しておけば、節税につなげることが可能です。
個人事業主の節税対策について
個人事業主が納付する税金はいくつもありますが、節税対策を実施すれば納税額を抑えられます。ここからは、個人事業主が行える節税対策をご紹介します。
青色申告を選択する
確定申告には白色申告と青色申告の2種類がありますが、節税を考えるなら青色申告の選択がおすすめです。
簡易簿記を使う白色申告は手軽に行えるものの、控除額が10万円までしかありません。これに対し青色申告は最大で65万円の青色申告特別控除が用意されています。少しでも税金を抑えたいのであれば青色申告を選択するほうが効果的です。
控除額を含め、青色申告には以下のようにさまざまな節税効果があります。
-
- 最大65万円の青色申告特別控除が受けられる
- 青色事業専従者給与を経費にできる
- 純損失の繰り越しができる
- 減価償却の特例を受けられる
- 貸倒引当金の計上ができる
青色申告を行うには複式簿記による記帳が必要です。複雑な部分もあり、一定の知識がなければ難しいと感じる個人事業主の方もいるかもしれません。
その場合は、青色申告ソフトを活用するほか、税理士に依頼をしてサポートしてもらうのも有効な手段のひとつです。
また、事前に開業届と青色申告承認申請書の提出も済ませておく必要があります。税務署にて各書類を届け出ておきましょう。
生命保険料控除を活用する
介護医療保険料や個人年金保険料を支払った場合、所得額から一定額を差し引くことができ、所得税や住民税が軽減されます。これが生命保険料控除です。生命保険をすでにかけている個人事業主なら、控除を活用しない手はありません。
控除の対象になるのは、一般生命保険・介護医療保険・個人年金保険の3種類です。
加入した時期によって計算方法が異なり、2012年1月1日以降に締結したものは「新」、それ以前に締結したものは「旧」に分類されます。それぞれの控除額は以下のとおりです。
【新契約(2012年1月1日以降に締結)】
年間の支払保険料 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 全額 |
20,000円超40,000円以下 | 支払保険料×1/2+10,000円 |
40,000円超80,000円以下 | 支払保険料×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
【旧契約(2011年12月31日以前に締結)】
年間の支払保険料 | 控除額 |
---|---|
25,000円以下 | 全額 |
25,000円超50,000円以下 | 支払保険料×1/2+12,500円 |
50,000円超10万円以下 | 支払保険料×1/4+25,000円 |
10万円超 | 一律50,000円 |
セルフメディケーション税制を活用する
2022年から始まった新セルフメディケーション税制は、特定の医薬品を購入した際に所得控除を受けられる仕組みです。
対象の医薬品はスイッチOTC医薬品と呼ばれます。該当する薬の処方を受けており、条件に適合する個人事業主は検討しましょう。
また、2022年以降に購入したスイッチOTC医薬品と同様の効能・効果を有する一定の医薬品も対象となります。詳しい医薬品の内容は厚生労働省のホームページから確認できます。
適用を受けるためには条件もあるので注意が必要です。「健康の保持増進および疾病の予防に関する一定の取り組み」を実施している方が対象で、健康診断を受けている方でないと申請できません。そのため、申請時には健康診断の結果通知表が必要になります。
各種制度に加入する
個人事業主向けの各種制度に加入し、税金を抑える手段があります。支払った金額に対して控除を受けたり、支払金額そのものを経費計上したりする方法です。
どのような制度があるのか、代表的なものを以下に紹介しましょう。制度ごとに目的が異なるので、自身が必要とする制度への加入を検討してください。
制度名 | 節税効果 |
---|---|
小規模企業共済 | 掛け金の全額に対して控除が受けられる |
iDeCo(個人型確定拠出年金) | 掛け金の額や所得税額に応じて控除が受けられる |
中小企業倒産防止共済 | 掛け金の経費計上ができる |
小規模企業共済とは、廃業時や退職後の生活資金確保のために積み立てを行う制度です。月額1,000円から掛けられ、加入しやすい点がメリットといえます。掛金は70,000円までの範囲内であれば500円単位で選べ、増額や減額も可能です。
iDeCoは個人事業主が掛けられる私的年金制度のひとつで、支払うことで所得税や住民税の控除が適用されます。
倒産時に備えた共済制度が、中小企業倒産防止共済です。万が一の事態があれば無利子・無担保で貸し付けを受けられます。掛け金は経費計上ができるので、節税にも役立つのです。
家事按分し、必要経費を計上する
自宅で仕事をしている個人事業主の方は、生活費と事業費が混在してしまいます。しかし、家賃や光熱費の一部も経費になるため、生活のための費用と事業にかかった費用を分ける必要があり、このことを家事按分といいます。
家事按分の対象は、家賃・光熱費・通信費・駐車場代などです。按分の仕方は、それぞれの費目によって違いがあります。
例えば、電気代は仕事で使用した時間から費用を算出し、家賃は仕事で使用している面積を基にして割合を算出する方法などです。
家事按分が面倒だからと経費計上を怠ると、課税所得額が増えてしまいます。払わなくてよい税金を払うことになるので、注意しましょう。
ふるさと納税を利用する
ふるさと納税を利用すれば、個人事業主が納める税金の一部に控除が適用されます。控除の種類は「寄附金控除」です。一定の限度額までを対象に、寄附額から2,000円を引いた額が当年の所得税および翌年度の個人事業税から控除されます。
ふるさと納税は、税金を納める自治体を選べる制度です。自治体ごとにさまざまな返礼品があり、地域の名産品を楽しめる機会にもなっています。
節税はもちろん、地方の魅力を知る意味でもおすすめです。地域で活躍する個人事業主にとっては、地元の盛り上げにも貢献できるでしょう。
経費にできる税金を知っておく
個人事業主が支払う税金の中には、経費にできるものもあります。経費にできるものを知っておくことで課税所得額を減らし、節税対策が可能です。
経費にできる税金 | 経費にできない税金 |
---|---|
・消費税
・個人事業税 ・自動車税 ・固定資産税 ・不動産取得税 ・登録免許税 ・印紙税 など |
・所得税/復興特別所得税
・住民税 ・加算税 ・延滞税 など |
経費にできる条件は「明確に事業のための費用である」ことが前提です。消費税は経費にできますが、私的な買い物で発生した消費税は経費計上できません。
同じ税金でも事業用であるもののみを計上し、正しく税金を納めてください。
まとめ・個人事業主が支払う税金を理解した上で節税対策を徹底しよう
個人事業主が支払わなければいけない税金は、主に4種類あります。免税になるもの、業種によっては当てはまらないものもあるので、内容を理解しておく必要があります。
確定申告の際に慌てないためにも、事業をスタートする前に税金の概要を把握しておくと安心です。
創業手帳の「税金で損をしない13の方法チェックシート」では、税金の支払いや経費の効果的な使い方、最新の節税テクニックなどを詳しく説明しています。税理士を含む専門家のリアルな意見も掲載しているので、ぜひ参考にしてみてください。
また、税理士が監修した「税金カレンダー」もご用意しました。こちらは主な税金の納付期限がカレンダー形式で確認でき、13種類のパターンをご用意しています。ぜひ自分に合ったものを見つけてみてください。すべて無料で提供していますので、気軽にご利用ください。
(編集:創業手帳編集部)